コロナ禍の事業立ち上げで活きるハッチングの力


クライアントは電子部品メーカー。自社のデバイス製造技術を活かした製造現場向けの新たなIoTサービスを、新規事業として検討していました。我々は、この新サービスの新たな市場・顧客の開拓を依頼されました。事前の調査により、ターゲット企業群として金属加工業界が有望との結果が出ていました。しかし状況は急変しました。



コロナにより事業環境が一変


新規事業や新サービス開発ではサービス仮説の検証を進めるために、ターゲット企業へのアポイント獲得が不可欠です。多くの場合は電話しても無下に断られてしまう辛く地道な作業ですが、コロナ前は10件電話をすれば1件はアポイントに繋がっていました。

ところがコロナ禍で状況が一変。50件電話してもアポイントが取れない、ようやく取れてもWEB会議に不慣れで対応できない、なんとか意見交換しても業績の急落で投資できる状態にないという三重苦でした。

大きくの企業が打撃を受けるこの状況下では、電話をすることそのものが無意味に思えた時も正直ありました。ですが、せめてクライアントに対する言い訳の材料にしようと、ターゲット仮説を作りながら電話をかけ続け、断られる理由も含めてフィードバックは必ず残すようにしていました。



生声が教えてくれた事業の可能性


ところが数100件の電話をこなしたところである傾向に気づきました。断られる理由の3~4割が「自社で既に検討中」との回答で、すでに検討がなされていたことだったのです。また「コロナ禍で不要不急のIoT投資はできない」という理由も多く、イノベーター理論と照らし合わせると、現在アーリーマジョリティのフェーズ、つまり既に導入している企業の成功事例を見て自社へのメリットが想定できれば導入検討のフェーズに差し掛かっていました。


残念ながら今回の新サービスは、「目新しいもの」ではなく「検討済み」として費用対効果を算出するには不十分なものでした。さらに電話では対面に比べて辛辣な意見を聞ける場面があり(当然、嬉しくはありませんが、、、苦笑)苦情の中にサービスに対する問題点がはっきりと示されるため、サービス開発に有益な情報が得られる機会になりました。辛い苦情であっても、現状の問題点を伝える重要な情報源となったのは間違いありません。


このような地道な作業を通じて、現在の製造現場向けのIoT投資が「トライアルフェーズ」から「投資フェーズ」に移行していると結論付け、より費用対効果に焦点を当てた新サービスへと見直し提案を行いました。クライアントにもご賛同を頂き、今後は販売戦略などを加え新たなビジネスモデルを形作っていくことになります。



困難、でもリアルに即していくことでしか切り開けない


コロナにより多くの製品やサービスがビジネスモデルの見直しを迫られています。とは言え、新しいビジネスモデルが生み出すことは簡単なことではありませんし、クライアントに対し「現在のサービスは売れる見込みがない」「こちらのサービスに可能性がある」と提案することは非常に困難な業務です。

だからこそターゲット企業へのヒアリングと600件にまで及んだテレアポ結果から具体的な生声を拾い上げ、それを代弁することで、我々の付加価値が見いだせたのだと思います。


答えが見えにくい環境下でも、粘り強く、地道に実験・仮説検証(プライマルグループではこれをハッチングと呼んでいます)を繰り返すことで、糸口が見いだせるのです。別の言い方をすれば、現場・現実・現物とギリギリで擦れ合えなければ、誰もが困難を感じるような障壁に穴を開けることは叶いませんでした。



※この記事は秘密保持のため一部フィクションが含まれています