失敗までもスピーディー?~波乱の幕開け
X社とのプロジェクトは、立ち上げる事業を一緒に考え詰めていくところからスタートした。
議論を重ねていく中で、選ばれた事業はX社単独での立ち上げは難しいものだった。なんせ参入しようとしていた業界は、その業界関連事業を主軸としている企業が9割以上を占めており、まるで畑違いのX社が容易に入っていけるものではなかったからだ。そこで、このX社の新規事業は弊社とつながりのある事業者との協業での立ち上げを目指すこととなった。
早速、協業先に打診したところ、引き合わせの場を設けてもらうことができた。このまま、ことは順調に進んでいくかのように思えたが、そうは問屋が卸さない。引き合わせ以降、双方の担当者から「なぜ紹介したのか?」「一緒に仕事をしたくない」などと、散々たるクレームをこれでもかというほどもらう羽目になる。どうやらX社と協業先の担当者とのソリが合わず、亀裂が生じてしまっているようであった。
スピーディーに進めるための入り込み作戦を開始
成功すれば双方にとってインパクトが大きい協業事業のはずであり、この問題は早急に解決すべきと判断し、まずはX社と協業先がコミュニケーションをとる場にもれなく参加した。なかなか前進しない交渉を円滑化させるため、弊社がX社や協業先により入り込み、各社の細かい調整の際も連携を取れる環境を整えていくことが狙いだった。
亀裂が生じた理由は、双方がコミュニケーションをとる場に参加することで、おのずとみえてきた。
X社の担当者が早期に協業実現をしたいと考え動いている一方で、協業先の担当者にはその考え、思いが伝わっておらず優先度の低い事案として動いており、スピード感に大きな隔たりができていたのだ。また、畑違いの人間同士のやりとりということで、双方が用いる用語やその定義にズレが生じている場面が多々あったことが、その隔たりをより大きくしていた。
ひとまずコミュニケーション面でのズレは、双方の文化に合わせた用語で資料を準備し、認識のズレがないかを所々で確認しながら話し合いを進めることで解消された。結果、以前に比べていくらかスムーズに交渉が進むようになった。しかし、まだ物足りない。X社が望む協業実現には、もっと交渉をスピードアップさせる要素が必要だった。
ハッチングのなかのパートナリングの真骨頂
ここで弊社が地道に取り組んでいた双方への入り込み作戦が活きてくる。
協業先については、今回の担当者のことはもちろん、社内のアサインロジックなどの情報までも収集できており、この案件を成功させるための「勘所」を把握できていた。
なかでも大きかった「勘所」は、双方の役員を話し合う機会を早々に設けることに成功したこと。狙い通り、協業先内でたちまちハイプライオリティな事案となり、協業先のリソースが拡充され、当初の担当者のほかにも、クライアントが求めるスピード感での動きを期待できる人をコアメンバーとして迎え入れることが可能になり、交渉は加速度的に進んだ。
その結果、わずか1か月で協業契約を締結し、5か月で協業事業を立ち上げることとなった。
通常、協業契約の締結に3~6ヶ月かかるといわれているので、いかにスピーディーにこの協業事業が成立したかは明白だ。協業事業立ち上げに必要な要素をいち早く見極め、またそのための情報収集を地道に続けた「ハッチング」の力があったからこそ実現した、段違いのスピードでの協業事業立ち上げだった。
※この記事は秘密保持のため一部フィクションが含まれています
Comentários